大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和57年(あ)1914号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人本人の上告趣意は、憲法三七条二項違反をいう点を含め、実質はすべて単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であり、弁護人日野和昌の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

なお、原判決及びその是認する第一審判決の認定したところによれば、被告人は、自己が約二週間前まで同棲していた女性マンション内において、その台所から持ち出した包丁を同女と関係を持つた男性の前頸部に突きつけるなどして、同人に慰藉料の支払方を承認する文書を作成させたり、同女の頭部を右包丁の峰で殴打したりし、その間これを手に把持していたというのであつて、右把持がある程度の時間継続したことは明らかであるから、たとえ、その場所が被告人と長年同棲し別居後間のない女性のマンション内であり、また当時両名の関係が所論のようにいまだ完全には解消されていなかつたとしても、右包丁の把持は、銃砲刀剣類所持等取締法二二条にいう「携帯」にあたるというべきである。

よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項但書により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(伊藤正己 横井大三 木戸口久治 安岡満彦)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例